九 - 11
「河豚と朝鮮仁参の取り合せは旨(うま)いね。おおかた河豚を食って中(あた)ったら朝鮮仁参を煎(せん)じて飲めとでも云うつもりなんだろう」
「そうでもないようだ」
「そうでなくても構わないさ。どうせ気狂だもの。それっきりかい」
「まだある。苦沙弥先生御茶でも上がれと云う句がある」
「アハハハ御茶でも上がれはきびし過ぎる。それで大(おおい)に君をやり込めたつもりに違ない。大出来だ。天道公平君万歳だ」と迷亭先生は面白がって、大に笑い出す。主人は少からざる尊敬をもって反覆読誦(どくしょう)した書翰(しょかん)の