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十一 - 4
。独仙君、君の気に入りそうな話だぜ」

    「質朴剛健でたのもしい気風だ」

    「まだたのもしい事がある。あすこには灰吹(はいふ)きがないそうだ。僕の友人があすこへ奉職をしている頃吐月峰(とげつほう)の印(いん)のある灰吹きを買いに出たところが、吐月峰どころか、灰吹と名づくべきものが一個もない。不思議に思って、聞いて見たら、灰吹きなどは裏の藪(やぶ)へ行って切って来れば誰にでも出来るから、売る必要はないと澄まして答えたそうだ。これも質朴剛健の気風をあらわす美譚(びだん)だろう、ねえ独仙君」
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