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十一 - 5
でもないさ。僕の妻(さい)は元来僕を愛しているのだから」

    「そいつは少々失敬した。それでこそ独仙君だ」

    「独仙君ばかりじゃありません。そんな例はいくらでもありますよ」と寒月君が天下の妻君に代ってちょっと弁護の労を取った。

    「僕も寒月君に賛成する。僕の考では人間が絶対の域(いき)に入(い)るには、ただ二つの道があるばかりで、その二つの道とは芸術と恋だ。夫婦の愛はその一つを代表するものだから、人間は是非結婚をして、この幸福を完(まっと)うしなければ天意に背(そむ)く訳だと思うんだ。――がどうでしょう先生」と東風君は相変らず真面目で迷亭君の方へ向き直った。

    「御名論だ。僕などはとうてい絶対の境(きょう)に這入(はい)れそうもない」

    「妻(さい)を貰えばなお這入れやしない」と主人はむずかしい顔をして云った。

    「ともかくも我々未婚の青年は芸術の霊気にふれて向上の一路を開拓しなければ人生の意義が分からないですから、まず手始めにヴァイオリンでも習おうと思って寒月君にさっきから経験譚(けいけんだん)をきいているのです」

    「そうそう、ウェルテル君のヴァイオリン物語を拝聴するはずだったね。さあ話し給え。もう邪魔はしないから」と迷亭君がようやく鋒鋩(ほうぼう)を収めると、
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